PIC/Sとは
目次
PIC/Sとは
PIC/Sとは、医薬品製造業者への査察基準を世界的に整合させるために組織された国際的組織。査察当局間の非公式な協力組織で、GMPガイドラインの策定や保守を行なっています。EUをはじめ、北米、アジア、オーストラリアなど数多くの国が加盟。日本も2014年7月1日に加盟しました。PIC/SはPharmaceutical Inspection Convention and Pharmaceutical Inspection Co-operation Schemeの略で、「医薬品査察協定及び医薬品査察共同スキーム」を意味しています。
PIC/SとGMPの違い
GMPとは医薬品分野の製造管理・品質管理に関する要件をまとめたもの。PIC/Sと似ていますが、GMPはあくまで国内における基準を示しており、国によって内容や適用範囲が異なる部分で違いがあります。
各国での基準の差によりGMPだけでは国境を越えたスムーズな利用・やり取りができない点が医療分野の課題の一つでした。そこで設立されたのが、各国のGMPに対し共通基準を設けたPIC/Sです。PIC/Sには法的な拘束力はないものの、加盟当局間の協力関係を強化し、世界的な医薬品分野の査察基準統合を目指しています。
PIC/Sのガイドラインのメリット
PIC/Sに加盟することで得られるメリットとしては、「製造効率の向上」「品質管理水準の向上」の主に2点が挙げられます。
加盟国同士には相互認証の仕組みがあり、これにより公的機関の査察が免除になったり、各国の基準の差によって種類の違う薬を開発する手間がなくなったりするメリットが得られます。開発や流通における手間や経費負担が減ることで、品質の良い薬をより効率的に製造・配送できます。
また、世界共通で定められた要件を基準にすることで、品質管理水準の向上も期待できるでしょう。国内だけでなく海外で発見された新たな知見・技術がすぐにPIC/Sを通して共有されるため、今よりも品質の高い薬の製造へと繋がります。
【2012年】日本のPIC/Sのガイドライン
日本は2012年よりPIC/Sへの加盟を申請し、2年かけてガイドラインを改正。2014年に加盟が認められました。その際に改定されたのが以下の6項目です。
品質リスクマネジメントの活用
複数の専門分野で構成されたチームを組織し、品質管理のリスク軽減・回避に努めることを示した項目です。製品のライフサイクルを考え、リスクの分析、評価、管理する体系的な組織方針・手順のもと、規範を示した品質リスクマネジメントの実現を目的にします。
製品品質の照査
定期的または随時実施され、製品の適切な管理の確認を目的とする製品品質の照査について示された項目です。原料や資材の受入時における試験検査の結果照査や品質管理の結果照査など、12項目を実行することが定められています。
参考品等の保管
出荷後の不具合や品質評価に備えるために、参考品や保存品を保管することが定められています。予想外の動きがあった際に、参考品や保存品をテストして確認できるようにするためです。
安定性モニタリング
製品が設定した有効期限内に正しく作用するかを確認するための規定です。温度・湿度など影響を受けやすい測定項目を選定して、少なくとも12ヶ月間隔でのモニタリングが定められています。
原料等の供給者管理
品質を保つために、承認された供給者からの原料の購入、規格に適合した資材の受入れなどが示されています。重要な原料や資材は供給者と共に製造や品質に関する取り決めを行ない、確認しながら管理することが求められています。
バリデーション基準の改正
バリデーションとは高品質な医薬品を安定製造できるプロセスを検証し、手順化・明文化すること。製品ライフサイクル、バリデーション活動、継続的工程確認等の採用について、厚生労働省より改正されています。
【2021年8月】GMP省令の改正内容
PIC/SではGMPガイドラインへの準拠を目的に、2021年8月にGMP省令の抜本的な改正が行なわれています。変更があったのは以下の8項目。日本も国際的な標準化に取り組んでいます。
医薬品品質システムの整備
改正したGMPに登場した要請で、医薬品の製造業者は実効性のある「医薬品品質システム」を構築することが求められています。製造業者は、品質確保のための基本的な方針、方針に基づく品質目標を明文化して周知しなくてはなりません。また、品質目標の達成に向けて製造所の代表者や役員によるリソース確保といった、経営陣の積極的な関与が求められています。
品質リスクマネジメント
GMP省令の改正によって、製造業者に「品質リスクマネジメント」を構築し、製造管理や品質管理に努めるように定めた項目です。品質リスクマネジメントとは医薬品の品質に対してリスク管理を行なう取組みのこと。構築の際には文書・記録の作成が必要で、指定した職員へ文書の作成・保管に関する責任者の権限を与える必要があります。
品質保証(QA)担当組織の設置
もともと製造所には「製造部門」と「品質部門」の設置が義務付けられていましたが、改正に伴って「品質部門」の下に新たに「品質保証に係る業務を担当する組織」「試験検査に係る業務を担当する組織」の設置が必要になりました。各組織には適切な業務を行なえるように十分な人員配置も求められます。業務に支障がなければ、品質保証・試験検査の兼任も可能です。
基準書の廃止・手順書の追加
改正前に「基準書」とされていた文書が、改正により「手順書」に変更されています。例えば衛生管理基準書が「構造設備及び職員の衛生管理に関する手順」へ、製造管理基準書が「製造工程、製造設備、原料、資材及び製品の管理に関する手順」へ変更されているのがその一例です。加えて、安全性モニタリングや製品品質の照査に関して17種類の手順書を別途作成する必要があります。
製造業者・製造販売業者の連携強化
製造業者と製造販売業者の連携を強化するように要請した項目です。製造販売承認書と製品との相違の増加を問題視し、改正されました。製造所が原料や資材、製品の規格を変更した際、製品の品質や承認事項に影響を及ぼす可能性がある場合には製造販売業者への連絡が義務付けられています。製品に重大な逸脱が生じた際にも同様です。
交叉汚染の防止
2つ以上の製品を同じ製造所で製造する際に混入して汚染(交叉汚染)が生じないよう、必要となる製造手順等での所要措置が追加されています。空調設備や作業室などの構造設備に基準を設け、交叉汚染を防止するよう求められています。
是正措置・予防措置(CAPA)の徹底
改正後のGMP省令では「是正措置」と「予防措置」の明文化により、医薬品のリスクマネジメントの強化が求められています。例えば規格に適合しない試験結果が得られたり、製造手順で重大な逸脱が生じたりした際に是正措置・予防措置が必要です。
データインテグリティの徹底
データインテグリティとは、データが一貫性を保ち、完全・正確である状態を指します。改正されたGMP省令では、データの完全性を確保できる厳格な管理が要請されました。製造業者は手順書の記録や管理業務者を予め指定する必要があり、手順書や記録に欠落・不整合がないように管理し続けなければなりません。
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