医療DXとは
目次
医療機関におけるDXとは
DXとは、AI・IoT・ビッグデータといったようなデジタル技術を駆使することで、これまでの事業のありかたを変革させる取り組みを意味する言葉です。従来の枠組みを取り除き、価値観を根底から変化させていくのが特徴です。企業がこれからも成長を続けていくためには、DXは必須要素であるといえます。
現在、さまざまな分野でDXが導入されつつありますが、医療機関におけるDX、すなわち医療DXは、患者さんに医療を提供する上で生じる課題を解決するための取り組みです。特に重要な目的は、より効果的・効率的な医療提供の実現です。
日本国内の医療業界の課題
アナログ的な方法による医療データ管理
現在、医療業界が抱えている課題のひとつとしてあげられるのが、医療データを管理する方法が、とてもアナログ的であるという点です。収集・活用においてもそれは同様です。脱アナログに向け、レセプトのオンライン請求が2006年から義務化されるなど、IT化を推進する動きはこれまでにもみられました。
実際、新設のクリニックでは管理をIT化している場合が多いです。けれども、現在でも紙やフィルムなどを使用してカルテ・レントゲン画像などの医療データを管理している医療機関も少なくないのが実情です。こういったアナログな運用が続いていることが、医療DX化の推進にブレーキをかけるひとつの要因となっていることは否めません。ちなみに、令和2年の時点でも、電子カルテの普及率は全体のおよそ半分にとどまっています。
アナログ的なデータ管理は非効率な面が多く、さまざまな状況にスピーディーに対応していくことは困難です。新型コロナ感染症の流行などを通じ、その非効率性が浮き彫りとなっています。
2025年問題による社会保障費の増大
少子高齢化が進む国内では、社会保障費の増加が大きな負担となっています。特に、団塊世代の方々が2025年に後期高齢者となることもあり「超高齢社会」に突入することになります。そのため、医療費や介護費用のさらなる膨張が予想されます。
医療分野における人的リソース不足
高齢化社会においては、労働力となる人口の割合が減少していきます。けれども、今後は他のさまざまな仕事と同様、医療現場にも働き方改革が導入される予定です。そのため、残業量が制限され、これまで以上に人的リソースの不足が深刻化していくでしょう。
さらに、厚生労働省による「令和2年雇用動向調査結果の概要」にて、こういった現状にとってマイナス材料となる情報が紹介されています。全16業種のうち、医療福祉業界の離職率が上から6番目の高水準となっているのです。
医療サービスの地域格差
医療サービスの質において、地域によってかなりの差が生じている状態も、解決すべき課題です。過疎化の激しいエリアは高齢化が進んでいる場合が多いにもかかわらず、医療機関の数が少ないのです。高齢者に多い脳卒中や心筋梗塞など、スピーディーな治療が求められる病気に対応するのが難しくなっています。
医療DXによって実現すること
現在の医療業界が抱える多くの課題を、解決へと導くことができる医療DX。ここでは「医療」と「DX」がどのように連動するのかイメージしやすくなるように、医療DXによって実現可能となることを具体的に解説していきます。
医療現場のさまざまな業務の効率化
医療現場の業務を、より効率的に進めやすくなります。効率化に特に寄与するアイテムとしてあげられるのが、RPAツールです。ロボットを活用して定型的な作業をオートメーション化することができるツールとして知られています。24時間ノンストップで作業を続けられますし、人的ミスもなくなります。
「医師の働き方改革」を支える勤怠管理DX
2024年4月から本格化した「医師の働き方改革」に伴い、医療従事者の正確な労働時間管理が義務付けられました。しかし、24時間体制や複雑なシフト勤務が多い医療現場では、従来のタイムカードや自己申告では管理が困難です。
そこで導入が進んでいるのが、全職員が携帯している職員証(ICカード)を活用した「ICカードリーダーによる自動打刻」です。出退勤時にカードをリーダーにかざすだけで、客観的で正確な労働時間を記録でき、集計業務の負担も劇的に軽減します。医療現場に適した打刻方法や、勤怠管理向けICカードリーダーの選び方については、専門の情報サイトも参考にすると良いでしょう。
オンライン診療の実用化
情報通信技術を活用することで、オンライン診療、つまり遠隔診療の実用化ができるようになります。実用化がかなえば、たとえば、地方在住の患者さんであっても、通院することなく都市部の医療機関での受診が可能になるわけです。
医療情報をシェアするためのネットワークの構築
医療DX化の推進により、医療情報ネットワークを構築していくことができます。さまざまな医療機関が患者さんの医療データをシェアできるネットワークが構築されれば、たとえば、初診の患者さんの過去のカルテを閲覧できるようになり、より充実した医療の提供へとつなげられます。
データ損失リスクの軽減
医療データをクラウド化すれば、事業継続計画への貢献も可能になります。医療施設などのサーバにのみ医療データを保存している状態だと、災害などが発生したときにデータが失われてしまう可能性が高まります。その点、クラウド上に保存されていれば、そのリスクを軽減できるからです。
医療DXの事例
ニコチン依存症の治療に利用
ニコチン依存症の患者さんは、服薬・禁煙日記を次回来院日までつけるよう指示されるのですが、途中で我慢できずに喫煙をしてしまうケースも多いとのこと。そのような問題に対処するため、個人の性格や生活環境に合う禁煙テクニックを管理する機能や、「喫煙欲求が強くなったときにどう対処すべきか」をAIが対話形式で提供するためのチャット機能を装備しているアプリもあります。
集中治療室不足の解決にもつながる医療DX
ICU、つまり集中治療室は、かねてから不足が指摘されています。解決策のひとつとしてあげられるのが遠隔集中治療患者管理プログラムの導入です。このプログラムを使い、ネットワークで病院と遠隔地の支援センターをつなげば、患者さんの様子をモニタリングしつつサポートすることができるようになります。
医療DX令和ビジョン2030とは
医療のDX化や医療情報の有効的な活用などを推進することを目的とした「医療DX令和ビジョン2030」。自民党政務調査会による提言です。推進チームが次のような取り組みについて検討をおこなっています。
全国医療情報プラットフォーム
全医療機関や自治体、医療保険者などがそれぞれ個別に管理してきた医療データをシェアできる「全国医療情報プラットフォーム」の創設です。マイナ保険証と組み合わせれば、患者さん自身も、時や場所を問わず医療データを閲覧することができるようになります。
電子カルテ情報の標準化・標準型電子カルテ
医療データの収集がスムーズに進まないのは、メーカーごとに電子カルテのデータ規格が異なることが、背景のひとつとしてあげられます。この状況を解決するために、厚生労働省が主導して規格を統一していこうとする取り組みです。統一が進めば、業務効率のアップだけでなく、収集したデータを匿名化した上で使用することで、医薬品・ヘルスケア産業でのビッグデータ活用が実現する可能性もあります。
診療報酬改定DX
診療報酬の算定に共通算定モジュールを導入することで、これまで診療報酬改定によって生じていた膨大な作業工程を省けるようにしていきます。モジュールを更新するだけで作業が済むので、さまざまな関係者の負担軽減につながります。
医療DX化の課題
多くのメリットを得られる医療DXですが、医療DX化を進め、普及させていくためには、解決しておくべき問題もあります。
セキュリティ上の脅威への対策
システム内に侵入後データを暗号化し、それをいわば「人質」にして金銭要求をおこなう、ランサムウェア。ランサムウェアによる影響で、診療を一時ストップせざるをえなくなった、といった被害が実際に生じています。大規模なデータをシェアできるコンピュータシステムの導入に際しては、このような脅威へのセキュリティ対策が万全になされている必要があります。
ITリテラシーが不十分な医療現場
医療従事者の方々はそれぞれの職種においては専門家であっても、ITに関する知識はそれほど深くない、というケースが多いです。一般企業のようにIT研修などを充分に実施している医療機関は少数派でしょう。そのため、医療DXを取り入れていこうとしても、特にマネジメント層にデジタル技術を比較的スムーズに理解できる人材が不足していると、DX化推進は難しくなってしまいます。
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